AEM で処理に時間のかかるクエリは、主に 3 つに分類されます。以下に重大な順に示します。
インデックスのないクエリ
制限(範囲指定)が不十分なクエリ
結果セットが大きいクエリ
最初の 2 つの分類のクエリ(インデックスのないクエリと制限が不十分なクエリ)の処理に時間がかかるのは、Oak クエリエンジンが強制的に結果候補(コンテンツノードやインデックスエントリ)それぞれを調査し、どれが実際の結果セットに属しているかを特定するからです。
各結果候補を調査する動作をトラバースと呼びます。
結果候補をそれぞれ調査する必要があるので、実際の結果セットを特定するためのコストは、結果候補の数に比例して増大します。
クエリの制限を追加し、インデックスを調整すると、結果を迅速に取得できるように最適化された形式でインデックスデータを格納できます。また、結果候補セットを順次調査する必要性が低減するかなくなります。
AEM 6.3 では、デフォルトでトラバースの回数が 100,000 回に達すると、クエリが失敗し、例外がスローされます。この制限は、AEM 6.3 より前のバージョンの AEM ではデフォルトで存在しません。ただし、Apache Jackrabbit クエリエンジン設定の OSGi 設定および QueryEngineSettings JMX bean(LimitReads プロパティ)で設定できます。
すべてのクエリの説明を実行し、それらのクエリプランに /* traverse が含まれていないことを確認します。トラバースするクエリプランの例は次のとおりです。
[nt:unstructured] as [a] /* traverse "/content//*" where ([a].[unindexedProperty] = 'some value') and (isdescendantnode([a], [/content])) */
インデックスのないトラバーサルクエリについて、error.log
を監視します。
*INFO* org.apache.jackrabbit.oak.query.QueryImpl Traversal query (query without index) ... ; consider creating and index
AEM のクエリパフォーマンス操作コンソールに移動し、処理に時間がかかるクエリの説明を実行して、トラバーサルまたはインデックスのないクエリの説明を探します。
すべてのクエリの説明を実行し、クエリのプロパティ制限に一致するよう調整されたインデックスに解決されることを確認します。
indexRules
を持ちます。orderable=true.
を設定するプロパティによる並べ替えに関するインデックスルールがあります。cqPageLucene
には jcr:content/cq:tags
に対するインデックスルールがありません。cq:tags インデックスルールを追加する前
cq:tags インデックスルール
Query Builder クエリ
type=cq:Page
property=jcr:content/cq:tags
property.value=my:tag
クエリプラン
[cq:Page] as [a] /* lucene:cqPageLucene(/oak:index/cqPageLucene) *:* where [a].[jcr:content/cq:tags] = 'my:tag' */
このクエリは cqPageLucene
インデックスに解決されます。ただし、jcr:content
または cq:tags
のプロパティインデックスルールは存在しないので、この制限を評価する際に、cqPageLucene
インデックス内のすべてのレコードが一致するかどうかを判断するためにチェックされます。つまり、インデックスに 100 万個の cq:Page
ノードが含まれている場合は、結果セットを特定するために 100 万件のレコードがチェックされます。
cq:tags インデックスルールを追加した後
cq:tags インデックスルール
/oak:index/cqPageLucene/indexRules/cq:Page/properties/cqTags
@name=jcr:content/cq:tags
@propertyIndex=true
Query Builder クエリ
type=cq:Page
property=jcr:content/cq:tags
property.value=myTagNamespace:myTag
クエリプラン
[cq:Page] as [a] /* lucene:cqPageLucene(/oak:index/cqPageLucene) jcr:content/cq:tags:my:tag where [a].[jcr:content/cq:tags] = 'my:tag' */
cqPageLucene
インデックスに jcr:content/cq:tags
のインデックスルールを追加したので、cq:tags
のデータは最適な方法で格納することができます。
jcr:content/cq:tags
制限を持つクエリを実行すると、インデックスは値に従って結果を検索できます。つまり、100 個の cq:Page
ノードに値として myTagNamespace:myTag
が設定されている場合は、この 100 件の結果だけが返され、他の 999,000 件は制限チェックから除外されるので、パフォーマンスは 10,000 倍向上します。
当然ながら、さらにクエリを制限すると、対象となる結果セットが少なくなり、クエリはさらに最適化されます。
同様に、cq:tags
プロパティのインデックスルールを追加しない場合は、cq:tags
に対する制限を持つフルテキストクエリであっても、インデックスからの結果ではフルテキスト一致がすべて返されるので、パフォーマンスは低下します。その後、cq:tags の制限がフィルタリングされます。
インデックス後にフィルタリングされるもう 1 つの原因は、開発中に見落とされることがよくあるアクセス制御リストです。ユーザーがアクセスできない可能性のあるパスがクエリによって返されていないかどうかを確認してみます。これをおこなうには、通常、コンテキスト構造を改良すると共に、クエリに適切なパス制限を指定します。
クエリの結果として非常に小さなサブセットが返されるように Lucene インデックスが多数の結果を返しているかどうかを特定するには、org.apache.jackrabbit.oak.plugins.index.lucene.LucenePropertyIndex
のデバッグログを有効にし、インデックスから読み込まれるドキュメントの数を確認する方法が役立ちます。最終結果の数と読み込まれたドキュメントの数を比較すると釣り合うはずです。詳しくは、ログを参照してください。
トラバーサルクエリについて、error.log
を監視します。
*WARN* org.apache.jackrabbit.oak.spi.query.Cursors$TraversingCursor Traversed ### nodes ... consider creating an index or changing the query
AEM のクエリパフォーマンス操作コンソールに移動し、処理に時間がかかるクエリの説明を実行して、クエリプロパティ制限がインデックスプロパティルールに解決されないクエリプランを探します。
oak.queryLimitInMemory とoak.queryLimitReads のしきい値を低く設定し(例えば、それぞれ 10000 と 5000)、UnsupportedOperationException にヒットして「The query read more than x nodes…」と表示されたときに高負荷のクエリを最適化します。
これにより、リソースを集中的に使用するクエリ(つまり、インデックスのないクエリまたは対応するインデックスが少ないクエリ)を回避することができます。例えば、100 万個のノードを読み取るクエリでは、大量の IO が発生し、アプリケーション全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。このため、上述の制限が原因で失敗するクエリは、分析して最適化する必要があります。
ログを監視して、大規模なノードの走査やヒープメモリの大量使用を引き起こしているクエリがないかどうかを調べます。
*WARN* ... java.lang.UnsupportedOperationException: The query read or traversed more than 100000 nodes. To avoid affecting other tasks, processing was stopped.
ログを監視して、ヒープメモリを大量に消費しているクエリがないかどうかを調べます。
*WARN* ... java.lang.UnsupportedOperationException: The query read more than 500000 nodes in memory. To avoid running out of memory, processing was stopped
AEM 6.0 ~ 6.2 では、AEM 起動スクリプトで JVM パラメーターを使用してノードの走査のしきい値を調整することで、大規模なクエリによって環境に過度の負荷がかかるのを防ぐことができます。推奨される値は次のとおりです。
-Doak.queryLimitInMemory=500000
-Doak.queryLimitReads=100000
AEM 6.3 では、デフォルトで上述の 2 つのパラメーターが事前設定されており、OSGi QueryEngineSettings を使用して変更できます。
詳しくは、https://jackrabbit.apache.org/oak/docs/query/query-engine.html#Slow_Queries_and_Read_Limits を参照してください。
AEM におけるクエリパフォーマンス最適化のモットーは次のとおりです。
「制限は多いほどよい」
以下に、クエリのパフォーマンスを確保するために推奨される調整の概要を示します。まずクエリ、次にあまり目立たないアクティビティ、その後必要に応じてインデックス定義をチューニングします。
AEM では、以下のクエリ言語がサポートされています。
以下の例では、AEM 開発者が最もよく使用する Query Builder を使用していますが、JCR-SQL2 および XPath にも同じ原則が当てはまります。
最適化されていないクエリ
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
最適化されたクエリ
type=cq:Page
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
ノードタイプの制限がないクエリにより、AEM では nt:base
ノードタイプが想定されます。これは、AEM のすべてのノードのサブタイプなので、実質上ノードタイプの制限は存在しません。
type=cq:Page
を設定すると、このクエリは cq:Page
ノードのみに限定され、AEM の cqPageLucene に解決されます。これにより、結果は AEM のノードのサブセット( cq:Page
ノードのみ)に限定されます。
最適化されていないクエリ
type=nt:hierarchyNode
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
最適化されたクエリ
type=cq:Page
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
nt:hierarchyNode
は、cq:Page
の親ノードタイプです。カスタムアプリケーションを通じて jcr:content/contentType=article-page
が cq:Page
ノードのみに適用されるとすると、このクエリは、jcr:content/contentType=article-page
である cq:Page
ノードのみを返します。ただしこれは、以下の理由から、次善策としての制限となります。
nt:hierarchyNode
から継承された他のノード(例:dam:Asset
)が、結果候補のセットに不必要に追加されます。nt:hierarchyNode
用のインデックスは存在しませんが、cq:Page
用に提供されているインデックスはあります。type=cq:Page
を設定すると、このクエリは cq:Page
ノードのみに限定され、AEM の cqPageLucene に解決されます。これにより、結果は AEM のノードのサブセット(cq:Page ノードのみ)に限定されます。最適化されていないクエリ
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
最適化されたクエリ
property=jcr:content/sling:resourceType
property.value=my-site/components/structure/article-page
プロパティの制限を jcr:content/contentType
(カスタム値)から既知のプロパティ sling:resourceType
に変更すると、クエリはプロパティインデックス slingResourceType
に解決されます。これは、sling:resourceType
によってすべてのコンテンツにインデックスを作成します。
(Lucene プロパティインデックスではなく)プロパティインデックスの使用が最も適しているのは、クエリがノードタイプを認識せず、単一のプロパティ制限によって結果セットが決まる場合です。
/content/my-site
より/content/my-site/us/en
が推奨され、また/
より/content/dam
が推奨されます。最適化されていないクエリ
type=cq:Page
path=/content
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
最適化されたクエリ
type=cq:Page
path=/content/my-site/us/en
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
パス制限の範囲を path=/content
から path=/content/my-site/us/en
に指定すると、調査する必要があるインデックスエントリの数を減らすことができます。単に /content
や /content/dam
ではなく、クエリでパスを効果的に制限できる場合は、インデックスに evaluatePathRestrictions=true
があることを確認します。
evaluatePathRestrictions
を使用すると、インデックスのサイズが大きくなります。
LIKE
や fn:XXXX
などのクエリの関数や操作を避けます。これらのコストは、制限に基づいた結果の数に伴って増減するからです。最適化されていないクエリ
type=cq:Page
property=jcr:content/contentType
property.operation=like
property.value=%article%
最適化されたクエリ
type=cq:Page
fulltext=article
fulltext.relPath=jcr:content/contentType
LIKE 条件の評価には時間がかかります。これは、テキストがワイルドカードで始まる場合(「%…」)はインデックスを使用できないからです。jcr:contains 条件は、フルテキストのインデックスの使用を可能にするので、推奨されています。これには、解決された Lucene プロパティインデックスに、analayzed=true
に設定された jcr:content/contentType
のインデックスルールが必要です。
fn:lowercase(..)
などのクエリ関数の使用を最適化するのは、(より複雑で目立つインデックス分析設定の外部に)より高速な同等の手段がないので困難です。他の範囲制限を指定し、クエリ全体のパフォーマンスを向上させることをお勧めします。これには、関数の操作対象となる結果候補のセットをできるだけ小さくする必要があります。
この調整は、Query Builder 固有であり、JCR-SQL2 または XPath には当てはまりません。
完全な結果セットがすぐに必要でない場合は、Query Builder の guessTotal を使用します。
最適化されていないクエリ
type=cq:Page
path=/content
最適化されたクエリ
type=cq:Page
path=/content
p.guessTotal=100
クエリの実行時間が短くても結果の数が多い場合、p.guessTotal
は、Query Builder のクエリにとって必要不可欠な最適化です。
p.guessTotal=100
を指定すると、Query Builder は最初の 100 件の結果だけを収集し、さらに 1 つ以上の結果が存在するかどうかを示すブール値フラグを設定します(ただしカウントすると処理に時間がかかるので、残りの数は示されません)。この最適化は、ページネーションまたは無限ロードの使用例よりも優れており、結果のサブセットだけが増分的に表示されます。
最適なクエリがプロパティインデックスに解決される場合、プロパティインデックスで可能なチューニングは最小限なので、できることはありません。
できることがある場合、クエリは Lucene プロパティインデックスに解決される必要があります。解決できるインデックスがない場合は、「新しいインデックスの作成」に進んでください。
必要に応じて、クエリを XPath または JCR-SQL2 に変換します。
Query Builder クエリ
query type=cq:Page
path=/content/my-site/us/en
property=jcr:content/contentType
property.value=article-page
orderby=@jcr:content/publishDate
orderby.sort=desc
Query Builder クエリから生成された XPath
/jcr:root/content/my-site/us/en//element(*, cq:Page)[jcr:content/@contentType = 'article-page'] order by jcr:content/@publishDate descending
この XPath(または JCR-SQL2)を Oak Index Definition Generator に提供して、最適化された Lucene プロパティインデックス定義を生成します。
生成された Lucene プロパティインデックス定義
- evaluatePathRestrictions = true
- compatVersion = 2
- type = "lucene"
- async = "async"
- jcr:primaryType = oak:QueryIndexDefinition
+ indexRules
+ cq:Page
+ properties
+ contentType
- name = "jcr:content/contentType"
- propertyIndex = true
+ publishDate
- ordered = true
- name = "jcr:content/publishDate"
生成された定義を、追加する形で既存の Lucene プロパティインデックスに手動で結合します。その他のクエリを満たすために使用される可能性があるので、既存の設定を削除しないよう注意してください。
/oak:index/cqPageLucene
です。クエリが既存の Lucene プロパティインデックスに解決されないことを確認します。解決される場合は、前述の既存インデックスのチューニングに関する節を参照してください。
必要に応じて、クエリを XPath または JCR-SQL2 に変換します。
Query Builder クエリ
type=myApp:Author
property=firstName
property.value=ira
Query Builder クエリから生成された XPath
//element(*, myApp:Page)[@firstName = 'ira']
この XPath(または JCR-SQL2)を Oak Index Definition Generator に提供して、最適化された Lucene プロパティインデックス定義を生成します。
生成された Lucene プロパティインデックス定義
- compatVersion = 2
- type = "lucene"
- async = "async"
- jcr:primaryType = oak:QueryIndexDefinition
+ indexRules
+ myApp:AuthorModel
+ properties
+ firstName
- name = "firstName"
- propertyIndex = true
生成された Lucene プロパティインデックス定義をデプロイします。
Oak Index Definition Generator によって新しいインデックスに提供された XML 定義を、Oak インデックス定義を管理する AEM プロジェクトに追加します(コードは Oak インデックス定義に依存するので、これらの定義はコードとして扱うことを忘れないでください)。
通常の AEM ソフトウェア開発ライフサイクルに従って新しいインデックスをデプロイしてテストし、クエリがインデックスに解決され、効率よく実行されることを確認します。
このインデックスを初めてデプロイしたときに、AEM によってインデックスに必要なデータが追加されます。
AEM のコンテンツアーキテクチャは柔軟です。そのため、コンテンツ構造のトラバーサルが時間の経過と共に受け入れられないほど大きくならないことを予測したり保証したりすることは困難です。
こうした理由から、パス制限とノードタイプ制限の組み合わせによってトラバースされるノードが 20 個未満であることが保証される場合を除いて、インデックスがクエリを確実に満たすようにします。
Query Builder Debugger
CRXDE Lite - クエリツール
Query Builder のログ記録
DEBUG @ com.day.cq.search.impl.builder.QueryImpl
Oak クエリ実行のログ記録
DEBUG @ org.apache.jackrabbit.oak.query
Apache Jackrabbit クエリエンジンの OSGi 設定
NodeCounter JMX Mbean
Oak Index Definition Generator